2012年4月3日火曜日

6.その3 1号機のメルトダウンの原因

「6.原発法15条通報から1号機原子炉建屋爆発まで」の続きで その3 です。
格納容器PCVベント=ベントが遅れたから、メルトダウンして水素が発生し爆発したと単純な構図が一般的だと思います。
しかし、ベントは格納容器の圧力を下げるもので、核燃料が入っている圧力容器の圧力(=温度)を下げません。
ベントしたからと言って、メルトダウンを防止できないことが今回分かりました。
メルトダウンを避けるには圧力容器の圧力=温度を下げなければなりません。
交流電源・直流電源が無い中、圧力容器に注水できるポンプはディーゼル駆動消火ポンプD/DFPや消防車がありました。

しかし、吐出圧力は0.69MPa gage(消防車の圧力も同程度)で圧力容器の圧力(原子炉圧力)の7MPa gageと比べ低く、直接圧力容器に注水できませんでした。

では注水を行うにはどのような方法があるのでしょうか?

逃がし安全弁を開いた状態にして、
圧力容器」の圧力(7MPa gage)を
「圧力抑制室」をくぐらせて
「格納容器」(0.1 MPa gage)に逃がして、
圧力を下げます。

そしてポンプで注水することになります。



格納容器には圧力抑制室をとおりますがガスが放出されますので圧力が上がり、最終的にベントが必要になります。
メルトダウンを防止するには、ベントではなく逃がし安全弁を開くことが必要なのです。

しかし、逃がし安全弁は直流電源がなく操作できませんでした。
結果、メルトダウン、続いてメルトスルーが起き消防車で圧力容器を冷やせました。

格納容器の使用圧力は0.5MhPaで、この圧力を超えると危険ですのでベントをした訳です。
ベントは、メルトダウンを防止するためではなく、格納容器を守る為に行われたのです。

資料は
です。

少し加筆しました。今(2012年7月9日)思うと津波で説明できない不具合を隠しているように思えます。

P119 
(d)発電所対策本部及び本店対策本部に期待された役割
東京電力自身が定めた
「福島第一原子力発電所のアクシデントマネジメント整備報告書」
は、
「より複雑な事象に対しては、
事故状況の把握やどのアクシデントマネジメント策を選択するか判断するに当たっての
技術評価の重要度が高く、また、
様々な情報が必要となる。このため、
支援組織においてこれら技術評価等を実施し、
意思決定を支援することとしている。」
と記載している。
発電所対策本部には、1 号機のIC の作動状態という最も基本的かつ重要な情報について誤認識していたことを容認することは許されないであろう。
本店対策本部においても、役割に応じた重要情報を把握し、支援することが期待されていた。
発電所対策本部及び本店対策本部は、このような重要情報の取捨選択や評価を適切に行ってIC の作動状態を判断していたとは思われない。
吉田所長は、「これまで考えたことのなかった事態に遭遇し、次から次に入ってくる情報に追われ、それまで順次入ってきた情報の中から、関連する重要情報を総合的に判断する余裕がなくなっていた。」旨供述する。
重要情報の取捨選択や評価に適切でない点があったとしても、関係者の熱意・努力に欠けるところがあったという趣旨ではない。
事後的にみるとこのような問題点が発見されるのであり、その点については問題点として指摘する必要があると考える。
同時多発的に複数号機で全電源喪失するような事態を想定し、これに対処する上で必要な訓練、教育が十分なされていなかったと言うほかない。

所長は非常用復水器(IC)の作動状態を適切に判断しているとは思えない。所長は「1、2、3号機で発生している状況を総合的に判断する時間的余裕がなかった」と言ってるけど訓練が足りなかったのじゃないか?
このあたりは、事故隠しにはみえません。
私は訓練が足りないのではなく、そもそも「複数の原子炉を同時に運転するのは危険すぎる」のだと思います。

P121
(2)1 号機及び2 号機原子炉への代替注水に向けた準備状況
a 吉田所長による代替注水の準備指示
3 11 17 12 分頃、吉田所長は、1 号機及び2 号機に関し、非常用炉心冷却装置による原子炉注水ができなくなったおそれがあると考え、早期に代替注水を実施することが必要と判断した。
低下傾向を示していた1 号機の原子炉水位計が再度計測できなくなり、発電所対策本部技術班は、1 号機のTAF 到達予測時間を1 時間後と評価していた。

この時点であと1時間ちょっとでメルトダウンが始まりそうだと認識していたことになるのかもしれません。時間的にはすぐに「逃し安全弁」を開き、ベントを実施しディーゼル駆動消化ポンプD/DFPで注水し圧力容器を冷やす段階です。
結果論ですが準備の段階はすぎて、「逃し安全弁」を開くべきかは検討すべきと思います。
それができなかった理由がこれではわかりません。

P122 
アクシデントマネージメントAM の一環として、
消火系FPから復水補給水系復水補給水系MUWC を通じ、炉心スプレイ系CS又は残留熱除去系RHRから原子炉に注水できるように代替注水手段を講じていた37
福島第一原発では、建屋内の消火系FPラインに建屋外から消防ホースで送水できるように、
3 台の消防車を置くとともにT/B 外側の送水口を増設し、複数箇所に防火水槽を設置していた。
1 号機及び2 号機については、全電源が喪失しており
電源を必要としないディーゼル駆動消火ポンプD/DFP を駆動源として、
消火系FP復水補給水系MUWC残留熱除去系RHR(又は炉心スプレイ系CS)を用いる代替注水しかなかった(資料Ⅳ-13 参照)。
P82下に残留熱除去系RHRの解説あります。
吉田所長は、1 号機及び2 号機について、消火系FPラインからの注水に加え、消防車を使用した原子炉への注水方法を検討するように指示した。

繰り返しますが非常用復水器ICが使い物に成らないと判断し
「逃し安全弁」を開き、
ベントを実施し
ィーゼル駆動消化ポンプD/DFPで注水し圧力容器を冷やす段階です

非常用復水器ICが使い物に成らないと判断したから上の作業になったのですが・・肝心な作業、ディーゼル駆動消化ポンプD/DFPで注水して冷やす作業については闇の中です。

結果的には「逃し安全弁」は開けすベントもまともにできなかったのですが・・

P123 
b 福島第一原発構内の消防車
発電班、復旧班は、3 11 17 12 分頃に、代替注水手段の検討を開始した。
消防車を用いて、防火水槽の水を消火系FPラインから原子炉へ注水することについては、アクシデントマネージメントAM として定められていなかったため、吉田所長が検討を指示したものの、各機能班の中で役割や責任が不明確であり、実際には、同月12 日未明まで、使用可能な消防車や送水口の確認、消防車の配置や消防ホースの敷設といった具体的な検討、準備はなされなかった。
消防車は委託を受けた南明興産株式会社(現・東電フュエル株式会社、以下「南明」という。)及び日本原子力防護システム株式会社(以下「原防」という。)が運転操作していた。
南明は、正門付近にある事務所において、消防車2 台を運用していた。
原防は、消防車1 台を運用して陸上防災業務に従事したほか、核物質防護(P/P)ゲートにおける検問等警備も行っていた。
津波発生直後、正門付近の倉庫にあった、南明の消防車1 台が利用できた。
津波発生当時、1 台は通行が分断され、利用不能となった。(後使用可能になる。)
原防が運転する1 台は津波により使用できなくなった。
発電所対策本部は、同月11 19 時頃以降、消防車の派遣要請をしながら、消防車を用いた消火系FP注水を具体的に検討する担当すら定まっておらず、具体的な準備は始まっていなかった。

ディーゼル駆動消化ポンプD/DFPで注水して冷やせないから言い訳をしているとしか思えません。
必死に「逃し安全弁」を開いてディーゼル駆動消化ポンプD/DFPで注水しようとしているはずです。

P125 
1 号機及び2 号機の代替注水準備状況
当直長は、代替注水手段の確認のために事故時運転操作手順書により1及び2 号機の原子炉への代替注水ラインを確認した。
 3 11 16 35 分頃、当直は、1/2 号中央制御室において、制御盤上、ディーゼル駆動消火ポンプD/DFP の状態表示灯が停止状態を表示しているのを確認した。
同日1642 分頃から同日16 56 分頃にかけて、原子炉水位は低下傾向を示していたことから、1 号機のIC が正常に機能していない可能性があると考え、ディーゼル駆動消火ポンプD/DFP を用いた消火系FP注水の実施に備え、ディーゼル駆動消火ポンプD/DFP の起動確認をすることにした。
同日17 19 分頃、1 号機T/B 地下1 階にあるFP ポンプ室に向かった。FP ポンプ室に入った。
同日17 30 分頃、当直は、FP ポンプ室において、FP 制御盤の故障表示灯が点灯していることを確認し、同制御盤の故障復帰ボタンを押すと、ディーゼル駆動消火ポンプD/DFP が自動起動した。
日本原子力技術協会の
には
P220
<代替注水の対応状況>
発電所緊急時対策本部(以下、「発電所対策本部」)では、D/D-FP を使用し、FP ラインより炉心スプレイ系(以下、「CS」という)を経由して代替注水を行うことを決定し、11 17 30 分に D/D-FP を起動した。
この代替注水ラインの弁操作は、電源が喪失しているため、中操Tama注中央制御室)ら行うことができなかった。このため、照明が消えた真っ暗闇の中で、原子炉建屋(以下、「R/B」という)内で CS などの弁を手動で開け、原子炉圧力の減圧後(0.69MPag 以下)注水可能な状態としたが、困難な作業で時間を要した。
とあります。
中間報告とは矛盾しますが、この方が理解しやすいです。
この資料のほうが正確だと思います。
中間報告は、どうも、原子力安全保安院と東電が打ち合わせた資料がベースになっているようです。
確か、ベントの為に1号機に入っているのだけれど、原子力安全保安院はどう説明するんだろう?、まだまだ、先ですがその内わかるでしょう。・・
「逃し安全弁」は圧縮空気がなく開けなかったのでしょう。
つまり、圧縮空気がないことは早い段階からわかっていた。
圧縮空気は津波ではなく地震で配管が壊れて、なくなったのです。

P126 
発電所対策本部(及び本店対策本部)は、1 号機のディーゼル駆動消火ポンプD/DFP の起動状況について報告を受け状況を把握していた。
2 号機についても同様に、ディーゼル駆動消火ポンプD/DFP の起動確認のため、T/B地下1 階にあるFP ポンプ室付近は浸水して近づくことができず
結局、T/B 地下1 階のFP ポンプ室に行って起動確認をすることはなかった。
発電所対策本部(及び本店対策本部)は、2 号機のディーゼル駆動消火ポンプD/DFP の起動状況について報告を受けて把握していた。
消火系FPラインから原子炉に注水可能なラインには、消火系FP復水補給水系MUWC残留熱除去系RHR(又は炉心スプレイ系CS)を接続する電動弁を各原子炉建屋R/B 内に立ち入って手動で操作する必要があった。
3 11 18 25 分頃、当直は、ICの機能が十分でないと判断して戻り配管隔離弁(MO-3A)を閉めてIC を停止し、いよいよ代替注水手段の準備を早期に整えようと考え同日18 30 分頃、消火系FPから原子炉へ注水するラインを構成するため、1 号機のR/B 及びT/B 内に立ち入った。
!あれ、あっさり1号機の原子炉建屋R/Bに入っちゃった?!
説明は?・・・え~?ごり押しかあ~まいったね ・;
1730分頃
1号機原子炉建屋R/B2重扉付近に差し掛かったところ放射線量が高くて入れなかったはずだよなあ~
しかも、主役が巧妙に入れ替わっています。
ディーゼル駆動消化ポンプD/DFPでの注水作業
を進めているような印象を受けますが、代替注水手段の準備とは消防車による注水作業のことです。
ディーゼル駆動消化ポンプD/DFPよる注水作業ができないのはポンプが壊れているか「逃し安全弁」が開かないと言うことです。
結果的にはディーゼル駆動消化ポンプD/DFPは使っていませんので壊れたと思います。
「逃し安全弁」も開いていませんので、「逃し安全弁」も開けない状態だった。
メルトスルーが起きて圧力が下ったか、下がるのを見越して消防車の準備をしていたことになります。

必要な電動弁を手動で開け、消火系FPから1 号機原子炉に注水可能なラインを構成した。
原子炉注水ラインを整えた後である
同日20 50 分頃
1 号機のディーゼル駆動消火ポンプD/DFP を起動させ、原子炉圧力の減圧後に注水が可能な状態にした。
もっとも、当直が1 号機R/B 内に入って原子炉圧力計により原子炉圧力を計測したところ、同日20 7 分頃の原子炉圧力は6.900MPa gage を示していた。
これに対し、1 号機のディーゼル駆動消火ポンプD/DFP の吐出圧力は0.69MPa gage 程度と低かった。

自動車から調達するわけですから、バッテリーは早い段階から準備できていたと思います。圧縮空気がないからメルトスルーを待つしかなかった、OR、何かしたが結果的にメルトスルーが起きて消防車で冷やしたのです。
以下は、加筆前のコメントです。

一つ謎が解けました。消防ポンプで注水されていることを知った時、消防ポンプってそんなに圧力が高いのか?それとも、格納容器に注水するのか?と疑問に思っていました。
圧力容器を冷やすには圧力を下げる必要があります。
注水していたと言うことはメルトスルーで圧力容器の圧力が下がった訳ですね。
逃し安全弁を開けないから
メルトスルーが起きるまで
準備をするだけしかできないのですね。
何故、ディーゼルポンプが待機状態のままなのか納得しました。

逃がし安全弁SRを操作盤上で操作して圧力容器の圧力を下げるか
メルトスルーが起こって圧力が下がるか
しないと注水できない訳です。

意識的か無意識的かわかりませんが・・
東電はバッテリーをあきらめて、メルトスルーを選択したわけだ。
何故、ベントができない理由を官邸に説明しなかったんだろう?
(現場には保安院はいたなあ~、このとおりなら保安院と東電はクズだな)

P128 
原子炉に注水するには、SR 弁を開けて原子炉を減圧し、原子炉圧力をディーゼル駆動消火ポンプD/DFP の吐出圧力未満まで低下させる必要があった。
SR 弁を開操作するには、合計120V のバッテリーを1/2 号中央制御室に持ち込んで制御盤内の端子に接続する電源復旧作業が必要であった。
1 号機については、この時点においても、その後も、かかる電源復旧によってSR 弁を開けて原子炉減圧を実施することはなかった。
 1 号機の後、2 号機R/B 及びT/B 内に立ち入り、2 号機原子炉内に消火系FPから注水可能なラインを構成する作業を行った。
2 号機についても、3 11 日中にはライン構成を完了した。
1 号機及び2 号機について、当直が3 11 日中にR/B 内でFP系から復水補給水系MUWC に接続する電動弁の手動操作を行うなどして原子炉に注水可能なラインに切り替えていたため、その後消防車を用いた消火系FP注水が可能となった。

1つ抜けてますね、
その後メルトスルーが起きて消防車を用いた消火系FP注水が可能となった。
ですね。
P129
3)1 号機原子炉への代替注水実施状況
a 消防車による淡水注入の準備状況
1 号機については、ディーゼル駆動消火ポンプD/DFP を起動させていたが、原子炉圧力が高く、原子炉へ注水できないまま、12 1 48 分頃、ディーゼル駆動消火ポンプD/DFP 停止を確認した。
バッテリー交換や燃料補給を試みたが、起動することはなく、その原因も不明であった。

今でも、ディーゼル駆動消火ポンプD/DFPが停止した原因は不明なのでしょうか?(調べる訳ないか・・・本当に動かしたのかな?)
ディーゼル駆動消火ポンプD/DFPが停止した原因は津波でないことは明かです。

ところで
3 12 4 時頃以降にようやく消防車を使ったラインが完成しています。(後述)
使えなかったラインは   12148分以前に完成し
使えたラインはもたもたして124時以降に完成です。

 1 号機の原子力圧力計によれば、
3 11 20 7 分頃に6.900MPa gage を示していたが、
同月12 2 45 分頃、0.800MPa gage を示し、その情報は、発電所対策本部及び本店対策本部でも共有された。
原子炉圧力(圧力容器)は0.800MPa gage=0.901MPa abs)まで低下し、ドライウェル(D/W)圧力計(格納容器圧)が示していた0.840MPa abs と近似する圧力値となっていたことから、炉心溶融が進み、原子炉圧力容器から圧力が大きく抜けるリーク箇所が生じていた可能性が高いと考えられる。

メルトスルーが起きた訳ですね。
後はベントをすれば、消火ポンプでも注水可能になる訳だ。
実際に注水したのは消防車ですが・・・

発電所対策本部は、1 号機の原子炉圧力が1MPa gage を大きく割り込んだため、消防車の吐出圧力をもってすれば注水可能と判断し、1 号機については、その後もSR 弁を開けて原子炉減圧操作を行うことはなかった。

ここまでくると逃がし安全弁を使う必要性はないです。

 P130
 東京電力社員には消防車の運転操作をできる者がおらず、南明に依頼して消防車を用いて注水作業を実施するほかなかった。
南明に対し
1 号機のT/B にある送水口を確認し、南明が運用する消防車を操作して注水してほしい。」旨要請した。
南明にとって、作業員を高い放射線量の中で危険な作業に従事させることになるが、これを応諾した。
もっとも、発電所対策本部は、1 号機T/B の送水口の位置すら把握していなかった。

常識外の発電所対策本部の対応です。所長の指示はなんだったのでしょう。担当が決まっていないなら決めるようにするのが所長の役割のはずですが・・・と思う。

南明社員のほか、発電所対策本部発電班の者1 名で1 号機T/B に設けられた送水口を探すことになった。
同日2 時から同日3 時にかけての頃、
送水口は見つからなかった為、一旦免震重要棟に戻った。
その後、送水口設置場所を知っていた者が見つかった。
南明社員は、同日3 時から同日4 時にかけての頃、送水口を発見した。
 3 12 4 時頃以降、1 号機T/B送水口において、消防車の水槽内にあった1,300ℓ の淡水を消火系FPラインから1 号機原子炉へ注水開始した。
消防車の水槽内の淡水が尽きると使用不能となった消防車にある1,000ℓの淡水を補給した。

12 2 45 分頃、圧力容器は0.800MPa gage を示したので、この頃から注水可能だったはずです。
送水口はこれ以前に発見されているべきでした。
こんなのが、原発を運転しているのです。

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