2012年4月14日土曜日

8.馬鹿げた3号機注水判断 メルトダウンの原因?


今回は、13日の3号機への注水の様子です。


消防ポンプで注水するには、原子炉圧力容器の圧力を下げる必要があります。
それには、逃がし安全弁を操作するのですが
「直流電源」=「バッテリー」
が必要でした。

ベント作業は、格納容器を守る為に必要なのですが、

逃がし安全弁による急速減圧は
メルトダウンを防ぐ
注水作業をするのに必要な作業でした。


ところで、
中間報告は時系列が分かりにくくなっています。
初めに経緯を少し整理します。

P176
133 55 分頃 
吉田所長は、3 号機のHPCI が停止したとの報告を受け、・・略・・逆洗弁ピット内の海水を3 号機原子炉に注水するラインを構成するとともに、SR 弁の開操作に必要なバッテリーを調達するように指示した。」
そして

P179
137 44 分頃
 バッテリー・・略・・を直列に接続してSR 弁制御盤につなぎ込み、同制御盤の操作スイッチ・レバーによりSR 弁を遠隔手動で開操作できるようにした。」

後は海水でも淡水でも注水ラインができれば注水できるのですが
海水による注水ラインは

P180
この頃、3 号機原子炉に注水するラインは完成していた。」

この頃とは13日早朝のことです。
バッテリーより早く注水ラインは完成していたことになりますから
313744分頃
には減圧作業ができたはずでした。



減圧作業をしたのは
P181
3 13 9 8 分頃・・省略・・3号機の原子炉の急速減圧を実施した。」
でした。


中間報告ではメルトダウンが何時起きたかまだ分かりませんが、
3号機は1時間以上早く原子炉圧力容器に注水は可能だったのです。

また、
中間報告は言い訳の羅列のように見えるので、
中間報告はいい訳であると仮定します。

資料は
です。

P176
3 号機注水に関する吉田所長の判断
 3 13 3 55 分頃、吉田所長は、3 号機のHPCI が同日2 42 分頃に停止していたことを知った。

吉田所長は、3 号機のD/DFP による注水のためSR 弁を開けて減圧操作することを試みたが失敗した旨の報告も受けた。

吉田所長は、3 号機のHPCI が停止で、SR 弁による原子炉減圧と消防車を用いた注水を実施する必要があると判断した。
注水するラインを構成するとともに、SR 弁の開操作に必要なバッテリーを調達するように指示した。

P177
135 8 分頃、当直は、原子炉格納容器の圧力上昇を抑えるため、RHR 注入弁を手動で閉操作し、S/C スプレイを開始した。このとき、S/C スプレイ手動操作用ハンドルが異常に熱くなっていた。


S/Cは圧力抑制室のことです。高圧注水系は「原子炉圧力容器」と「圧力抑制室」の圧力差によって動きます。

を参照

圧力抑制室S/Cを冷やせば圧力が下がり、高圧注水系HIPCは安定に動作することになります。
高圧注水系HIPCが自動起動したのは
121235分です。

12日の内にするべき作業でした。

蛇足ですが・・高圧注水系を0.8MPaで動かしていたのですから、圧力抑制室の圧力は0.8MPaになったはずです。圧力抑制室の中は水だけだとすると水蒸気圧が0.8MPaで湿度100%となっています。これは飽和蒸気圧です。
飽和蒸気圧0.8MPaの水温は約170度位のようです。
参照

135 8 分頃まで、RCIC の手動起動を試みたがうまくいかず
135 10 分頃、発電所対策本部にその旨報告した。
135 58 分頃、原災法第15 条(原子炉冷却機能喪失)判断した。

3 13 6 19 分頃、3 号機につき、同日4 15 分頃にはTAF に到達していたものと考えられたため、吉田所長は、官庁等に、その旨報告した。

P177
HPCI 停止後の海水注入準備の状況
・・省略・・
電源復旧作業が思うように進まなかった。

P178
自衛消防隊及び南明社員は、消防車を用いてピットから海水をくみ取り、
137 時頃までには注水ラインが完成した。

P179
13 2 42 分頃にHPCI 停止後、SR 弁を遠隔手動で開操作できるようにした。

P179
d 淡水注入への変更・実施
 3 13 日未明以降、官邸5 階の総理大臣応接室では、3 号機原子炉への海水注入に向けた作業を実施しているとの情報が得られ、「発電所に使える淡水があるなら、それを使えばいいのではないか。」などといった意見が出た。

東電側の証言だと思います。

13同日早朝、東京電力部長は、吉田所長に電話をかけ、「他に防火水槽とかろ過水タンクとかに淡水があるのではないか。淡水が残っているなら極力淡水を使った方がいいのでないか。官邸でそのような意見が出ている。」旨伝えた。

吉田所長は、海水注入の前に極力ろ過水タンク等に残る淡水を注入すべきというのが、菅総理を含めた官邸の意向と理解した。
部長が指示を出したのだと思います。
注水が1時間以上遅れた言い訳だと思います。言い訳になりませんが・・

吉田所長は、現場で海水注入のための作業を行っていた自衛消防隊及び南明社員に対し、海水注入のための作業を中断して、使える淡水を全て使えるよう注水ラインを変更するように指示した。

 この頃、3 号機原子炉に注水するラインは完成していた。
しかし、自衛消防隊及び南明社員は、防火水槽の取水口を探し回り、防火水槽から淡水をくみ取る敷設等の作業を行った。

バカな指示です。
本来は淡水注入→海水注入の順ですが、この場合、安定して注水できる海水注入がベストです。
それを部長の指示を受けて淡水注入→海水注入の順にして注水を1時間以上遅らせてしまったのです。

P181
3 号機の原子炉圧力は、
13855 分頃に7.300MPagage であったが、
139 10 分頃に0.460MPa gage
13925 分頃に0.350MPa gage まで減圧され、消防車により3 号機への淡水注入を開始した。

もっとも、注水の水源となる淡水には限りがあったため、吉田所長は、近いうちに海水注入に切り替えなければならないと認識していた。

Baka  Yaro-  to  Iitai

131220分頃 淡水が枯渇
131312分頃 海水注入開始。

1時間の空白が生まれました。無駄な時間です。

P181
e 問題点の指摘(3 号機代替注水の準備・実施上の問題点)
(a)3 号機代替注水の準備・実施の開始時期
①―省略―
②―省略―
制御盤上の操作スイッチ・レバーによってSR弁を開操作できると考えていた。
かかる状況において、当直がHPCI からFP 系注水に切り替えようとする判断自体は、あながち不合理とも言い切れない。

高圧注水系HPCIの自動停止のような
危機的な状況が差し迫っていなければ独自判断はあり得ません。
不合理です。

バッテリーが消耗し、SR 弁の開操作に十分な電気容量が残っていない可能性も予想できたのではないかと思われる。

基本的作業のバッテリー電圧確認を怠っていたのです。

また、D/DFP の吐出圧力は、同月13 1 45 分頃には0.42MPa gageしかなく、SR 弁の開操作ができても、D/DFP による注水が可能な程度まで十分原子炉減圧がなされることの確証はなかったと思われるところ、当直及び発電所対策本部発電班においては、この点に関する検討がなされていなかった。

中間報告は手動で停止とありますが、
やはり
13242分頃 高圧注水系HPCIが自動停止し、
緊急避難的に逃がし安全弁SRを開いてディーゼルポンプで注水しようとしたが、
逃がし安全弁が開かず、注水できなかったのです。

時間的余裕があれば、
独自判断で高圧注水系HPCIを停止させるなどあり得ません。
責任を押し付けられた形ですが、慣れっこなのでしょう。

当直員引継日誌によれば、132 42 分頃にHPCI を停止させた後、同日3 5 分頃になって切替操作に関する報告がなされた旨の記述となっており、ラインの切替を確認したのはHPCI を手停止した後であったと認められる。



手順としては、HPCI 手動停止前にラインの切替確認までしておくべきであったと考えられる。

直流電源の枯渇を心配していたわけですから、交流電源喪失時にラインの切替を行っておくべきでした。マニュアルに書いておくべきです。

③-省略―
 
 高圧注水系を手動停止させたとしての記述ですが・・
 読むとたくさん「ありえない行動」を取ったことになるのが分かります。
 たぶん読んでも意味は無いと思います。
 高圧注水系は自動停止するのですが、それを見落としたと思います。
その言い訳に終始しているように思えます。

④―省略―
⑤ ―省略―
SLC 系注水は、HPCI の次に講ずべき代替注水手段として適当とは言えなかった。

ホウ酸水注入SLC系は交流電源を使いますので当然です。

⑥ 次に、D/DFP を用いたFP 系注水であるが、―省略―十分な注水効果を期待し得なかった。
⑦ ―省略―
消防車を用いたFP 系注水が信用できないとして代替注水手段の選択肢から除外する合理的理由は見当たらない。

⑧ ―省略―HPCI 停止直後の同月13 2 44 分頃には 0.580MPa gage を示し、これらは、発電所対策本部及び本店対策本部でも逐次把握されていた。

0.580MPa gageは原子炉圧力容器の値です。
この値は圧力抑制室S/Cより低いと思います。
高圧注水系は手動で停止する前に自動停止しているはずです。
東電のUSOが透けて見えるようです。

―省略―HPCI を手動停止後の同月13 2 44 分頃、原子炉圧力は0.5800MPa gage まで低下しており、あらかじめ消防車を用いたFP 系注水の準備を整えていれば、SR 弁による減圧操作を待つまでもなく、優に注水できたと認められる。

⑨―省略―
消防車を利用して、・・・海水を注入する準備を整えることは可能であったと考えられる。

⑩ ―省略―
HPCI 作動中に、SR 弁開操作に必要なバッテリーを調達することが不可能であったとは認められない。

⑪―省略―

3 55 分頃、・・・消防車を利用した注水ラインを構成する作業を開始し、降、・・・、同日7 時頃以降、・・・バッテリーをケーブルで接続して制御盤裏の端子につなぎ込むなどして時間を要し、SR 弁による減圧操作後に実際に注水を開始できたのは、同日9 20 分頃であった。

逃がし安全弁SRの操作ができるようになったのは13744分です。
P179
137 44 分頃
 バッテリー・・略・・を直列に接続してSR 弁制御盤につなぎ込み、同制御盤の操作スイッチ・レバーによりSR 弁を遠隔手動で開操作できるようにした。」

そして
海水による注水ラインは13日早朝には完成していました。

P180
この頃、3 号機原子炉に注水するラインは完成していた。」

この頃とは13日早朝です。
これが920分頃まで遅れたのは
先に淡水注入するバカな指示を出した為です。
しかも、

131220分頃 淡水が枯渇
131312分頃 海水注入開始

1時間近くの空白時間も作ってしまいました。

より早い段階で3 号機の減圧、代替注水作業を実施していた場合に、3 号機にかかる今回の被害を防止又は軽減できたかについては、実際より早期に注水できたか、その時点で炉心の状態がどうであったかなど、不確定要因が多々あるため、軽々に述べることはできないが、仮に、より早い段階で3 号機の減圧ができ、消防車による代替注水が順調に進んでいれば、実際の対応に比べ、炉心損傷の進行を緩和し、原子炉圧力容器における放射性物質の放出量を抑え、その後の作業を容易にした可能性はあったと思われる。

中間報告は作業員には厳しく、部長や所長には寛大だと思います。

P192
(b)3 号機代替注水ラインの切替
―省略―海水を注入するラインが完成した後になって、・・・東京電力部長からの示唆を契機に、・・・淡水を注入するように変更指示をした。

確かに、淡水注入ラインへの変更作業が完了した後も、原子炉格納容器ベントの実施及び原子炉減圧に必要なバッテリー等の調達に時間を要するなどしたため、前記注水ラインの変更によって注水開始時間が遅れることはなかったとも言い得る。

7 44 分頃にはバッテリーは接続され、逃がし安全弁は操作可能でした。
海水ルートは13日早朝に完成しています。
現実は7 44 分頃には注水可能だったのです。
それが
920分まで1時間36遅れたのは

注水ラインの変更によって注水開始時間が遅れた

のです。
中間報告は嘘をついていると言ってよいでしょう。

しかし、・・・同日12 20 分頃には取水可能な淡水が枯渇し、・・・結局、海水注入を開始したのは同日13 12 分頃であり、淡水が枯渇してから約52 分間、十分な原子炉注水ができない時間が生じたのみならず、高線量の中で作業員らをして海水注入ラインの再構築作業に従事させることになった。

こんな人たちの下で働きたくないです。

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