2012年4月5日木曜日

6.その4 ベントしても注水作業をしていた南明社員


1号機は逃がし安全弁SRが開かず、また、非常用復水器ICもまともに動きませんでした。
小型の発電機で1号機の発電機で格納容器の圧力を確かめた時は、
圧力容器が壊れ(メルトスルーが起きて)、格納容器の圧力が0.6MPa600KPaを超えていました。
600KPa1号機の格納器の最高使用圧力を超えるものです。
しかし、メルトスルーが起きていますので、圧力容器と格納容器の圧力は同じになり、消防車で圧力容器に注水できるようになりました。

その時状況を伝えるFAX


今回とは関係ありませんが、上のFAXの添付資料として

があります。
左上の 「1U」の「注水状況」をみると

IC動作中(2130 減圧中 3A弁開、ICA)胴側に消火系で給水中)
HPCI(電源復旧待ち)
とあります。

胴側とは、非常用復水器ICに冷却水を入れておくタンクです。言わば本体です。
中間報告では、東電(及び打ち合わせた原子力安全・保安院)はこれに給水していないと(USOを)言っていました。

これにより、中間報告は

非常用復水器ICはほとんど役に立たなかった

としています。

原因が隠されているのだろうと思います。


資料は
です。

今回は注水作業の様子から始まります。テーマが変わると時間が前後します。
時系列が読みにくいので注意してください。

P131
b 消防車による淡水注入を本格的に実施した状況
 125 時頃、自衛消防隊と南明社員は、1 号機への注水作業を実施するため、1 号機タービン建屋T/B 付近に向かった。

同日5 46 分頃、消防ポンプを起動させて防火水槽から水を吸い上げ、1 号機原子炉内に淡水注入を開始した。

当初は、ほぼ数十分ごとに1 から2 程度と流量を制限しながら注水していた。

3 12 6 時から同日7 時にかけての頃、
自衛隊の消防車2
同日1052 分頃、柏崎刈羽原発の消防車1 台が到着した。

これらの消防車で淡水を集めています。

P133
1 号機への海水注入に向けた準備状況
同日12 時頃、吉田所長は、淡水が枯渇した場合には海水を注入することを決断し、海水注入のためのラインナップを検討するように指示した。

現場で注水作業に当たっていた自衛消防隊や南明社員は、現場付近に注水に使える水がないか探し回った。
3 号機T/B 前の逆洗弁ピットに津波の海水が大量に溜まっていることを、発電所対策本部に報告した。

吉田所長は、淡水が枯渇した場合には、海水を使おうと考え、担当責任者にその旨指示した。

総理大臣官邸(以下「官邸」という。)に詰めていた武黒フェロー、班目委員長、保安院関係者らも、淡水が枯渇すれば海水を注入することは当然のことと考えていた。

1214 53 分頃、淡水が枯渇した。
1214 54 分頃、吉田所長は、1 号機原子炉への海水注入を実施するように指示した。

しかし、3 12 15 36 分頃、1 号機R/B で水素ガスによると思われる爆発が発生し、現場で作業に従事していた東京電力社員3 名、南明社員2 名が負傷した。

南明社員は東電と契約し、消防作業に当たっています。

爆発前後の時系列を少し整理します。
この時は、1号機のベントを行いました。

121430分 東電は格納容器圧力低下でベントが完成したとしています。
メモ27
Takanosunotama.blogspot.jp/2011/06/27.html
1529分頃 敷地境界放射線量異常上昇して
1536分頃 爆発
1617分  敷地境界放射線量異常上昇の原発法15条通報しました

ドライベントして、放射線量が異常上昇しました。
どのくらい上がったかと言うと

モニタリングポスト MP-4で 121529分に1015.1μSv/hの放射能を記録しています。放射能が高くなったのは爆発前です。

12日の放射能は1015.1μS/Vが最高で、以降下がり続けました。
爆発により放射能がばら撒かれたのではなく、ベントによってばら撒かれたのです。

12日はこれが最大で
1015.1μS/h1.0151mSv/h8892mS/
一般時の年間許容被曝線量は1mSv/年ですから、
1時間浴びると許容量の8892
1分でも148倍です。

東電は放射線量が高まって作業をしなかったり、中断したりしていますが、この時作業は中断もしていません。

すでにメルトスルーは起きています。(消防車で注水している)
ベントすれば圧力は下がり、とりあえず格納容器の壊れる危険性は低くなります。

ベントが完成すれば放射能を出すのは分かり切ったことです。
作業は一旦中断すべきだったと思います。

法律はよくわかりませんが、
作業員が高い放射線量を浴びていなくても「傷害未遂」になるのでは?
浴びていれば「傷害罪」ですけど・・・
東電のイイカゲンな管理だと思います。

注水作業者は、現場退避して免震重要棟に戻った。
その後、安全が確認されるまでは、復旧に着手できない状態であった。
爆発後、1 号機T/B 送水口への注水ラインに敷設された消防ホースは、爆発の影響で破損して使用不能となった。

現場で作業していた南明社員や東電社員の安全は無視されてベントがなされたのです。

爆発後 
P135
消防車3台は起動可能であった。
吉田所長は、1 号機爆発直前には、消防車による海水注入のラインも完成し、ホウ酸水注入SLC 系ポンプを起動させるために必要な電源復旧作業もほぼ完了し、1 号機への代替注水準備が整いかけた段階であったのに、爆発によって一から復旧を余儀なくされた。

唐突にホウ酸水注入SLCが記述されています。
また、後ででてくるのかな?
高圧の電源車からケーブルをホウ酸水注ポンプまで伸ばしたが、爆発でケーブルが破損して、電源車が自動停止したのですが・・・。
そのクダリをメモ27から転載します。

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3月12日
05時46分 所内消防車から淡水注入
15時30分 高圧電源車の接続 ホウ酸注入ポンプ手前まで送電?

    
ホウ酸注入ポンプ手前まで送電?とは何を意味しているのか?・・・意味がよくわかりません。
 高圧とは600Vを超え7000V以下の電圧だそうです。おそらく、6600Vだと思います。
非常用炉心冷却装置は電源があれば動くはずなのですが、何故、ピンポイントでホウ酸注入ポンプ手前なのだろう?
本来、非常用炉心冷却装置を動かそうとするはずなのですが・・・
15時31分 1号機爆発 電源ケーブルが損傷(?)高圧電源車自動停止(?)
偶然、ホウ酸を入れる直前に爆発が起き、偶然ケーブルが損傷し、高圧電源車が自動停止した?
 写真でもあれば、信憑性があるのだが・・・
 ・・・鉄塔の自重がかかるなどしないとケーブルが簡単に損傷するとは私には思えない。
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電気屋ですから、自動停止した電源車は直そうとするはずですが・・
壊れたのかどうかもわからない・・・
消防車より重要だと思いますが、ここまで中間報告では話題になっていません。
たぶん、これからも・・・

P135
1 号機R/B 付近は、がれきが散乱して放射線量が高く、再度爆発が起こる危険も払しょくできなかったが、1 号機原子炉への代替注水に向けた対応を迫られ、吉田所長は、同日17 20 分頃には、現場作業を再開するように指示した。

・・・・

自衛消防隊及び南明社員は、1 号機R/Bから飛散した鉄板等のがれきを片付け、再び1 号機への注水ラインの敷設作業を進めた。

・・・・

d 問題点の指摘(1 号機代替注水の準備・実施上の問題点)
3 11 17 12 分頃、吉田所長は、1 号機及び2 号機の原子炉への代替注水手段として、消防車を用いたFP 系注水についての検討指示も出していた。
しかし、1 号機T/B の送水口の場所を探し始めたのは、12 2 時から同日3 時のことであり、当初の注水の準備・実施も、東京電力ではなく南明社員が行った。
124 20 分頃、南明から放射線量が高く、南明だけで注水作業に従事するのは困難であると聞かされ、
125 時頃になって、自衛消防隊が、一緒に現場での注水作業に従事するようになった。
結局、継続的に注水を開始できたのは、
125 46 分頃となった。
1211 15 37 分頃に全交流電源喪失し、その頃、直流電源も全て喪失して、IC が機能不全に陥ってから、実に14 時間以上経過してのことであった。

-省略- P137 
SR弁を開操作するにはバッテリー合計120V が最低限必要であった。バッテリーについては、福島第一原発においてあらかじめ備えがなかったので、収集・確保に苦慮したという事情があった。
311 日夕方から夜にかけて、大型バスや業務用車両からバッテリーを取り外す作業を実施していたのであるから、減圧操作に必要なバッテリー合計120V を発電所構内で確保することはできたと思われる。-以降 省略-

発電所対策本部が設置された免震重要棟はガスタービン発電機で明かりが灯され、本店とTV会議がなされていました。
きっと、免震重要棟の地下あたりに非常用のバッテリー群があると思います。
無ければ、免震重要棟ではありません。
発電所対策本部は現場にまるなげでバッテリーが必要などと考えていなかったと思います。
考えていたら・・・一言、TV会議で要請すれば良いわけですから・・

可能性は低いですが、逃がし安全弁SRが固着して開かない
(開かなかったから圧力異常上昇で非常用復水器ICが動きました)
ことを知っていたかもしれません。

発電所対策本部は「圧力異常上昇」で非常用復水器が動いたことさえ認識していなかったと思います。

知っていれば、2号機より1号機のほうが深刻であったことが分かったはずです。
(まともな技術者なら・・)

 さらに、注水作業が遅れた原因の一つとして、吉田所長の指示に基づく消防車を用いた注水作業を担当するグループが定まっていなかったことが挙げられる。
1 次緊急時態勢発令後、福島第一原発に緊急時対策本部が設置され、通報班、情報班、広報班、保安班、技術班、復旧班、発電班、厚生班、医療班、総務班、警備誘導班、資材班といった12 の機能班に分かれ、
また、復旧班の下に自衛消防隊も組織され、それぞれの役割に応じて原子力災
害に対応する防災体制が確立された。

しかし、-省略-
12 2 時頃になるまで、発電所対策本部内部で、役割・責任を自覚して検討を行ったグループはなかった。

「所長さんが班長さんたちを集めて「どうしよう」と会議を開いて「こうしよう」と決められなかった。」ってことらしいです。

-省略-

P141
b 吉田所長の原子炉格納容器ベント準備指示
 交流電源及び直流電源を喪失して以降、
1 号機についての3 11 16 42 分頃から同日16 56 分頃までの間を除き、同日夜まで、その原子炉水位が計測できなかった。

2 号機については、原子炉水位が不明である上、RCIC による原子炉への注水状況が確認できなかったため、吉田所長は、3 11 21 2 分頃原子炉水位がTAF に到達する可能性があることを官庁等に報告し、さらに、同日21 13 分頃、TAF 到達時間を21 40 分頃と評価して、これを官庁等に報告した。

RCIC による原子炉への注水状況が確認できなかったため、
原子炉隔離時冷却系RCICは自動停止するので、
だと思います。

1121 19 分頃、1 号機の原子炉水位計が復旧し、有効燃料頂部TAF+200mm を発電所対策本部に報告した。

これを受けて、吉田所長は、1 号機が依然としてTAF に到達しておらず、引き続きIC が機能しているものと考えた。

111516分 原子炉水位(広帯域)+910mm TAF4340mm
112119分                TAF200mm
4メートルも水が無くなり、燃料が顔を出すまで後20センチになったのです。
ICが機能していても役にはたっていないのは明らかです。 

-省略-
吉田所長は、IC の作動状態について誤解していたと考えられる。

誤解ではなくUSOだと思います。何か隠しているのでしょう。

P142
 11 22 時頃、2 号機の原子炉水位も判明し、TAF+3,400mmを発電所対策本部にその旨報告した。

2 号機の原子炉水位が判明したことで、発電所対策本部及び本店対策本部は、2 号機についてRCIC が作動している可能性が高く2 号機よりもむしろ、1 号機の原子炉の方が危険な状態にあるのではないかと考えを改めるようになった。

逃がし安全弁は自動的に開き、「水位高」の異常を引き起こしますから原子炉隔離時冷却系は自動停止します。
ベントの準備が必要です。

 3 11 23 25 分頃、1/2 号中央制御室において、計測機器の復旧作業を行っていた。
協力企業の小型発電機から端子にケーブルをつなぎ込んだところ、2 号機のD/W圧力計は0.141MPa abs を示した。
1123 50 分頃、D/W 圧力計が、既に1 号機のD/W 最高使用圧力0.528MPa abs を超える0.600MPa abs を示したため、その旨報告した。

(冒頭のFAX 参照 PaPa absは少し単位系が違うらしい absは絶対値の意味?)

吉田所長は、1123 50 分頃、D/W 圧力が0.600MPaabs を示したとの報告を受けて、原子炉圧力容器内で大量に発生した水蒸気が原子炉格納容器内に抜けてD/W 圧力が異常上昇したのだと考えるに至った

12 日零時6 分頃、吉田所長は、既に事態が悪化して1 号機のD/W 圧力が0.600MPaabs を超えている可能性があると考え、躊躇することなく、発電所対策本部発電班及び復旧班に対し、1 号機の原子炉格納容器ベントの準備を進めるように指示した。

無意識的にメルトスルーを選んだことになります。意識的に選んだのならこの前にベントの準備作業を行っているはずです。
実際にここから14時間半後の
121430分に東電はベント完成としています。
所長は本当に何も分からなかった判断できなかったのだと思います。

この頃、吉田所長は、相当量の水蒸気が原子炉圧力容器内で発生して原子炉格納容器に抜けた以上、原子炉水位が相当低下し、炉心の損傷が相当進んでいるはずだと考えた。

P148 下の解説
 1 号機には、原子炉圧力容器からS/C 側に吹き出すSR 弁が4 本あり、原子炉圧力が7.3MPagage 前後で逃し弁機能が、7.7MPa gage 前後で安全弁機能がそれぞれ作動する。したがって、これらのSR 弁の逃し弁機能又は安全弁機能が作動し、原子炉圧力容器内の大量の蒸気がD/W内に吹き出すことにより圧力が上昇した可能性がある。もちろん、この時点で、既に原子炉圧力容器、配管、貫通部等のいずれかにリーク箇所が生じて蒸気がD/W 内に抜けた可能性も否定できない。

逃がし安全弁は自動的開いた後すぐに閉じてしまいます。開いた状態を保つには操作盤上で操作する必要があります。

2 号機についても、近いうちに1 号機と同様の状態になることが予想されたため、併せて、原子炉格納容器ベントを実施する準備を進めるように指示した。

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