2012年4月13日金曜日

7.忘れられた3号機 いずれ自動停止する高圧注水系


「外部電源全喪失」には、事前に定められ対処の手順がある。運転員ならだれでも、電源喪失状態からどういうふうに復旧していくか、すぐに思いつくように訓練されている。ただし、その手順も訓練も、バッテリーが生きていることが前提となっている。そのバッテリーがもつのは8時間。つまり、午後1140分ころまで、「8時間だぞ」、だれかがそう声を上げる。


ルポ 東京電力原発危機1カ月 奥山 俊宏 著 朝日新書
P27 より

8時間だぞ」と声が上がったのは東電対策本部と読めそうですが・・

これが本当なら
バッテリーが枯渇する目安は午後1140
112340分頃
を本店の対策本部は頭に叩き込んでいたはずです。

なのに

3号機はバッテリー切れでメルトダウンがおこりました。
経緯は、原因不明で原子炉隔離時冷却系が止まり、再起動できませんでした。

ここが元凶です。何故、止まり、バッテリーがありながら再起動できなかったか東電は明らかにすべきです。

そして、原子炉圧力容器が加熱して高圧注水系が自動起動しました。
しかし、中間報告によると高圧注水系は手動で停止されました。
ディーゼルポンプで注水して冷やすはずでしたが、注水する前に原子炉圧力容器の圧力が上がり、注水できなくなってしまいました。
またバッテリーが枯渇していて、高圧注水系は再起動できずメルトダウンしました。

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今は、この解釈は少し間違えがあるように思います。高圧注水系は圧力容器と圧力抑制室の温度差(圧力差)なくなれば動かなくなります。手動で高圧注水系を止めたと訳のわからない言い訳をしていますが、手動で止めなくとも自動停止する運命にあり、おそらく自動停止したとおもいます。
高圧注水系が止まった後、格納容器内スプレイを動かしますが、これは高圧注水系を再起動するより多くの電力を使うと思われます。
これを使うと、本当にバッテリー切れになりますので東電本店がすぐにやめさせています。
バッテリー切れなど起きていなかったのだと思います。
高圧注水系が動かなくなることなど考えていなかったのでしょう。基本的な解釈が足りなかったのだと思います。
あれば、圧力抑制室をなんとか冷やす作業をするか、すぐにベントをして圧力容器に海水でもなんでも注水すべきでした。
電力会社には基本的にこうした能力が足りないと思います。
(原発は普段も事故を起こしていてまともな対策などしてこなかったのです。水素でよく火災を起こすのですが、原子力発電所内には可燃物はないとする報告もあるくらいです。)
日本に原発を安全に運転できる技術者などいないのだと思います。
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元凶は原子炉隔離時冷却系RCICですが・・・
今回、問題になるのは高圧注水HPCI系です。



高圧注水系HPCI

ポンプは

原子炉圧力容器(A)と圧力抑制室S/C(B)の圧力の差により
タービンで発電して動きます。

原子炉圧力容器と圧力抑制室S/Cの圧力が同じになれば、高圧注水系HPCIのポンプは止まってしまうのです。


資料は
です。


P164
(7)3 号機のプラント状態と対応
 3 11 16 3 分頃以降、3 号機のRCIC は、手順通り、復水貯蔵タンクの水を水源として運転していた。
原子炉への注水ラインのほかに、試験に用いるテストラインを用いて、RCIC を作動させた(図Ⅳ-7 参照)。

3号機は地震発生後
1115 5分頃 RCIC を手動起動
1115 25分頃 原子炉水位が高くなり自動停止し
1116 3分頃 RCICを手動で起動
していました。

12 11 36 分頃、3 号機のRCIC が停止した。

原因は書いてありません。今回は再起動できないようです。

?中間報告では、油を含んだ水でラッチがどうのと書いてありますが意味がわかりません。
RCICが再起動できないことの説明もありません。

その後
121235分頃、高圧注水系HPCI が自動起動し
13242分頃、高圧注水系HPCIを手動で停止しています。

高圧注水系HPCIは自動起動した時点では
バッテリーはまだ残っていると考えてよさそうです・・・
原子炉隔離時冷却系RCICは壊れたのかもしれません。

テストラインを用いて復水貯蔵タンクに戻し入れるラインも活用するなどして、流量を調整してHPCI を運転制御した。

P165
1 号機R/B 爆発後、3 号機R/B 爆発まで(3 12 15 36 分頃から同月14 11 1 分頃までの間)

ここで、中間報告の話題は1号機に戻ります。簡単に記述します。

P165
1 号機R/B 爆発後の復旧状況
―省略―

「海水注入を中断した」と嘘の報告をした経過が書いてあります。
嘘の内容は、所長は本店に「海水注入を中断した」と言いながら実際は海水注入を続けました。
言い訳もひどすぎるものです。
東電本店、発電所対策本部、原子力安全・保安院は、事故を終息させる努力をせず、訳のわからない行動をとったと解釈してよいでしょう。

P169
その後、武黒フェローは、海水注入に関し菅総理の了解が得られたとして、本店対策本部を通じて、発電所対策本部にも同情報が伝えられた。
吉田所長は、本店対策本部や発電所対策本部の大半の人間が海水注入を継続していることを知らなかったので、改めて、同日20 20 分頃、緊急時対策室において、海水注入再開の指示を出した。

海水注入中なのに、中止したと嘘を言い、さらに海水注入再開したとの報告をしたのです。
嘘に嘘を重ねています。
・・・
話題は3号機に戻ります。

P170
(2)3 号機への代替注水の状況
3 号機の当時のプラント状況と当直の対応
3 12 11 36 分頃、何らかの原因RCIC が停止した。

中間報告はここまで、3号機の原子炉隔離時冷却系が停止し、また、再起動できなかった理由を述べていません。
調査していないのと同じです。調査して説明すべきです。


RCIC の再起動を試みたがうまくいかなかった。
1212 35 分頃、HPCI が自動起動した。
1219時以降、3 号機の原子炉圧力は、0.8MPa gage から1.0MPa gage の数値を示すようになった。

12 20 36 分頃、3 号機原子炉水位計の電源(24V 直流電源)が枯渇し、原
子炉水位の監視ができなくなった。
12日未明に調達した2V バッテリーより電源復旧作業を行った。
その間、原子炉水位を監視できなくなったため、HPCI の流量の設定値をやや引き上げた上、HPCI の運転状態を確認していた。

遅すぎますが・・バッテリーが枯渇し始めていることに気がつかなければなりません。
低圧の電源車はありました。
現場の整流器が使えなければ、ヘリコプターで運べたはずです。
電源車と整流器があれば、電圧がちがっても配線を工夫すればバッテリーの充電はできました。

8時間だぞ」と声が上がったのが事実なら、バッテリーは発電所に送られているはずです。

バッテリーが枯渇する目安は112340分頃です。

この時間前に、バッテリーを送ることが決められなければなりません。
12 1 20 分頃までの間に高圧電源車合計4 台が到着しています。
高圧電源車が着く前にはバッテリーや整流器が到着していてもおかしくありません。


HPCI は、原子炉圧力が1.03MPa gage から7.75MPa gage 程度の高圧状態にある場合に短時間に大量に原子炉注水をするために用いることが予定された注水システムであった。
しかし、原子炉圧力が0.8MPa gage から0.9MPagage を推移している中で、流量調整をしながら、手順で定められた運転範囲を下回る回転数で長時間作動させ続けていた。

もう一度冒頭の図を見ます。

原子炉圧力容器圧力(=原子炉圧力)と圧力抑制室S/C圧力の差がなくなると
高圧注水系は自動停止します。
下の図は3号機のプラント挙動です。


ピンクのグラフがガクン下がった所が、高圧注水系が動き始めたところです。
その下のグラフは1212時の圧力は約0.38MPa=380kPaと読みとれます。
次の資料で121245分 D/W380PaabsとありますからD/W圧力のようです。
次の図は
の内、第15条‐18報の添付資料です。


資料の 3u  D/W圧力の欄には

D/W380Paabs
S/C800Paabs
1245現在)

とあります。
この時、原子炉圧力容器の圧力は5.6MPaですが高圧注水系が動いて0.8MPagage (=800MPagage)から0.9MPagage(=900MPagage)になります。

圧力抑制室S/Cの水で原子炉圧力容器を冷やしています。
これは、圧力抑制室S/Cの水の温度を上げることに他なりません。
交流電源は失われていますから、圧力抑制室の水は冷やせません。
圧力抑制室の水の温度は上がり続けるのです。

圧力抑制室の「温度が上がる」のは「圧力が上がり」続けるこを意味します。

ですから、S/C800Paabsと圧力が上がったのです。
高圧注水系HPCIは何時止まってもおかしくなかったのです。

高圧注水系HPCIを本当に手動で止めたか分かりませんが・・・
高圧注水系HPCIは止まる運命にあったのです。

さらに、次第に、HPCI の吐出圧力が低下傾向を示し、原子炉圧力と拮抗するようになっていった。

高圧注HPCIが止まりそうだと言うことです。

原子炉水位が不明な中で、通常と異なる運転方法によってHPCIの設備が壊れるおそれがあるとも考え不安を抱くようになった。

原子炉圧力が0.8MPa gage から0.9MPa gage 程度といった低い状態であったため、SR 弁を開けて原子炉を更に減圧すれば、作動中のD/DFPでも注水可能であり原子炉に注水できると考えた。

HPCI による注水からD/DFP による注水に切り替えた方が安定した注水ができると考え、同月13 2 42 分頃、HPCI を手動で停止することにした。

高圧注水系HPCIが壊れるのかどうか知りませんが、動かし続ければ、原子炉圧力容器と圧力抑制室との圧力がなくなり止まる訳です。
東電本店や発電所対策本部はこうしたことが分かっていなかったのです。
分からなかったことは許されることではありませんが、こうした教訓も中間報告では消えてしまいます。

また、注水はディーゼル駆動消火ポンプD/DFPより、出力の大きい消防車で注水すべきでした・・

 HPCI を手動停止する前、(緊急時対策室の発電班ブースに控えていた3/4 号中央制御室担当の当直長ら)に対し、HPCI を手動停止し、SR 弁で減圧操作してD/DFP を用いた原子炉注水を実施したい旨相談した。

HPCIの設備破損等の危険があるのに対し、SR 弁を開けてD/DFPによる原子炉注水が可能なのであれば、HPCI を停止するのもやむを得ないと伝えた。

情報伝達が疎かになり、HPCIの手動停止に関する情報が、発電所対策本部発電班全体で共有されることもなかった。

吉田所長を含む発電所対策本部幹部や本店対策本部も、3 号機の当直がHPCI を手動で停止しようとしていることを知らなかった。

組織になっていません。こんな馬鹿げた話は信じないほう良いと思います。
メチャメチャなツジツマ合わせだと思います。事実は他にあるような気がします。

132 42 分頃、HPCIを手動で停止した。

132 45 分頃及び同日2 55 分頃、SR 弁の開操作を実施。
しかし、SR 弁を開くことができず、減圧操作に失敗したと判断。

SR 弁の開操作に失敗した原因については、その後同日9 時頃、電源復旧してSR 弁の開操作に成功していることから、(表示ランプが点灯ついてしていても)開操作に必要なバッテリー容量が不足していた可能性がある。

バッテリーで表示ランプは点灯できたが、電磁弁を操作できるほど力は残っていなかったと言うことらしいです。
弱ったバッテリーでトラックのエンジンはかからなかったが、バイクのエンジンなら回ったと言うことです。
バッテリー電圧の確認を怠っていたのかもしれません。(たぶん・・)

 3 13 2 45 分頃及び同日2 55 分頃、
SR 弁の開操作に失敗、その都度、状況を発電所対策本部発電班に報告していた。

しかし、状況を伝え聞いた者は交代要員として控えていた当直長らで、報告していなかったため、

発電所対策本部や本店対策本部は、

高圧注水系HPCIを停止したことや、逃がし安全弁の開操作に失敗したことも知らなかったそうです。
・・・信じられませんが(Shinnjimasenn ga)・・・
トカゲのしっぽ切りか事実か分かりませんが、対策本部の判断が間違っていたか組織として成り立っていなかったと言うことです。
事故が起きて当然です。

3 号機の原子炉圧力は、
132 44 分頃 HPCI 停止直後 0.580MPa gage
133 時頃 SR 弁の開操作失敗後 0.770MPa gage
133 44 分頃 4.100MPa gage
を示し、上昇傾向に転じた。
その間、3 号機のD/DFP原子炉注水をしようと試みていたが、
133 5 分頃、D/DFP の吐出圧力は0.61MPa gage
3 号機の原子炉圧力を上回ることはなく、注水することは不可能であった。

3 13 3 35 分頃、HPCI の再起動ができなかった。再起動できなかった要因は、HPCI 起動時のバッテリー消費が大きいため、再起動に必要なバッテリー残量がなかった可能性が高い。そして、このバッテリーは、人力で持ち運び困難であり、仮に新たなバッテリーを調達したとしても、3 号機R/B 内に持ち運んで取替作業を行うことは事実上不可能であった。

建屋にバッテリーを落ち込む必要はなくケーブルを接続させればよいので作業は可能です。
また、整流器(充電器)があれば
低圧電源車と整流器で電圧が合わなくともケーブルの接続を工夫すればバッテリーに充電可能だった可能性が高いです。
13日7時39分格納容器内スプレイを行っていますのでバッテリーはある程度残っていました。
高圧中水系を起動できたかわかりませんが・・
起動できなかった理由は原子炉と圧力容器との圧力差がなくなった可能性もあります。


HPCI が運転停止状態にあることを確認した。

FP 系から注水することができず
RCICHPCI も再起動できなかった

随時、発電所対策本部発電班に報告や相談をしていた。

当直から報告、相談を受けた発電班の人間や、周囲の人間は、誰からも発電班長への報告がなされず
発電所対策本部や本店対策本部は、HPCI の手動停止や、停止後の当直の対応について把握できなかった。

??どのように考えたらよいのでしょう?
こんなことがあるのだろうか?との思いです。

本当は
原子炉圧力容器と圧力抑制室の圧力が同じになり自動停止した
と考えたほうがすっきりします。

そして、ディーゼル駆動消火ポンプD/DFPで注水しようとしたが間に合わなかった。
そんなところだと思います。

133 55 分頃になってようやく、発電班長に対し、
3 号機のHPCI が停止し、D/DFP による注水を試みたが、注水できなかった。原子炉圧力が4MPa gage 程度まで上昇した。」旨報告し、
発電所対策本部幹部も、3 号機のHPCI が停止したことを把握した。
それまで、HPCI を手動で停止したとの報告も受けておらず、3 号機のHPCI が正常に作動しているものと考えていた。

中間報告でも私の妄想でも
ここまで読む限り、いずれ高圧注水系が止まると考えた者はいなかったと思います。
原子炉圧力容器の圧力が上がっても、高圧注水系が動かなかったのはバッテリーの枯渇によるものです。
原子炉隔離時冷却系が動かなくなって、3号機がどのようになるのかが全く予想できなかったようです。

東電対策本部で「8時間だぞ」と声が上がったとはとても思えません。



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3120630分現在 3号機の圧力容器圧は7.23MPaとなっています。
原子炉隔離時冷却系で冷やしているのに高い値だと思います。

高圧注水系のように原子炉隔離時冷却系で1MPa gage程度まで冷やせないのだろうか?と思います。

1号機で再発電にそなえ7MPa程度の圧力に保ち、直流電源を失ってすぐにメルトダウンしたとも考えられます。

つまり、非常用復水器ICでも「圧力は下げられた」=「温度は下げられた」わけです。

・・・

原子炉隔離時冷却系RCICは非常用ICより冷却能力が高いはずですから、

・・・

3120630分、3号機の圧力容器は冷やすことができていたことになります。
(原子炉隔離時冷却系は起動時以外、圧力容器と格納容器の圧力差を使いますから、バッテリーを無駄に消耗することもありません。)

この想像が正しいなら、東電は津波が来た後もすぐに3号機で発電を再開しようとしていたことになります。・・・

定期検査以外、原発を止める発想自体がなかったのかもしれません。
メチャメチャですが・・そう解釈するしかありません。

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